わたしとあなたは平行線

学生がかいています。

シン・ゴジラを見ました。※ネタバレ注意

昨年のヒット作といえば、「君の名は。」に続いて「シン・ゴジラ」ですよね。

監督は「エヴァンゲリヲン」シリーズで有名な庵野秀明。キャストも豪華で約12年ぶりのゴジラシリーズということで公開前からものすごい話題でした。

ちなみに、賛否両論ありますが映画界からの評価も高く、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞、キネマ旬報社の日本映画ベストテンでは第2位にランクインしています。

 

 

さて、ストーリーの話をしましょう。この映画は、

もし現代日本にゴジラが出現したら

というお話です、簡潔に言うと。というか作品名のとおりですね(笑)

 

 

ゴジラが突然出現するところから始まります。しかし、もちろんこの世界の人間はゴジラという生物を知らない。もはや突然出現してきたものが生き物であるということでさえはじめは信じようとしません。矢口(この作品の主人公、長谷川博己さんが演じてます)がこれは巨大不明生物ではないでしょうか?と投げかけても、総理は

「そんなものいるわけないだろ!」と一喝。上司の赤坂(竹野内豊)にも白い目で見られてしまいます。

 

事態を穏便に済ませようと政府の人間はこれは爆発みたいなことだ言いますが、みているこっちからすると、割と滑稽に思えてきます。わたしたちは、はじめからこの世界にゴジラが出現することを知っている、いわばスクリーンの中の世界では神のような視点で見ているのですから当然なのですが、そこは映画の罠というか、面白いところだと私は感じました。

 

さて、この映画を見続けていくと思うことがあると思います。

官僚たちが何を言ってるのか全然わからない!

 

そう、ゴジラの出現によって、総理はじめ官僚たちは何度も会議を開き対策を練っていくのですが、これがまあ早口。やたら早口。しかも専門用語のような難しい言葉を高速に並べていくので、もうこちらの頭はしっちゃかめっちゃか。まあ早急な措置が求められている状況下ですから早口当たり前ですし、緊迫感も出てていいと思うんですが。しかし全然ついていけない。

 

でも安心してください。何を言っているかわからなくてもストーリーについていくのには支障ありません。おそらく制作側としてはあえてこうすることで、日本の政治システムの面倒くささを皮肉っているのでしょう。

 

その証拠に、官僚内でのこんな会話がちょくちょく挟まれます。

「会議を開かないと動けないことが多すぎるな」

「効率は悪いがそれが民主主義だ、民主主義の根幹だよ」

「しかし手続きを踏まないと会議も開けないなんて…」

 

戦後に制定されて未だ改正が進んでいない憲法や法律にしばりつけらて対策に手個づっているのも印象的です。中でも実際の法律文を画面いっぱいに表示するのはとても象徴的なシーンでした。かっこいい!

 

さてさて、物語中盤にさしかかると、この作品一番の展開がやってきます。

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これですね。拾い画ですが。この前に自衛隊が滅茶苦茶に爆弾攻撃を仕掛けるんですが、それが何一効かない。そして終いにはまさかの放射線を吹き出してしまうんです。

 

これにより、ゴジラの生態がどんどん明らかになっていきます。

さて、ここで考えてほしいのは、

なぜ、現代に「シン・ゴジラ」という作品を作ったのか?

ということです。ゴジラの動源はなんと核分裂によるものでした。体の中で何度も核分裂をおこし、それをエネルギーとしていたのです。

 

そこで想起されるのが、

東日本大震災

です。原発放射能…今もなお解決していない問題です。

東日本大震災が起こったのは今から6年前の2011年。ここでゴジラが表象しているのは、人間が到底抗うことができない、自然災害というものなのかもしれません。自然VS人間。こんな構図も現れます。

 

そして、ゴジラ出現に米国やその他かつての列強国も黙っていません。(石原さとみの大げさな英語がうざったいけどそれもキャラがたっててよし)

核兵器レベルの生物には核兵器を、ということで、東京の中心地に原爆を投下することを世界連合軍は決定してしまいます。世界VS日本という構図まで浮き上がってくる。

ゴジラより怖いのは私たち人間ね」

というセリフがありますが、まさにその通りです…。

 

原爆によりゴジラを撃退する…太平洋戦争下での広島・長崎への原子爆弾投下をも

想起させます。これでなぜこの映画が今、日本でつくられたのか明確になったと思います。

その証拠に、日本人の祖母を持つ石原さとみも、世界連合軍が原爆投下を検討しているという話をきいて、かつての悲惨な歴史的事実を懐古します。と同時に実際の原爆投下後の焼け野原になった広島の写真が挿入されます。よく戦争映画とかで使われる手法ですよね。これは戦争映画だったのか?と一瞬目を疑いました。

 

 

 

最終的に矢口たちは世界連合軍の力を借りことなく、原爆を使うことなく、ゴジラを凍結させることに成功します。またこの彼らのプランが無人在来線爆弾っていう夢のあるものなんですが…このことについては沢山の人がかいているので言及するのは控えておきましょう。

 

 

「日本はまだやれる、そう思うよ。」

これは矢口のセリフなのですが、これこそが庵野さんの伝えたかったメッセージなのかもしれません。

 

しかし、最後に言っておきたいのが、このゴジラ

感情表現が何一つないんですよね。

 

他のシリーズの作品だと、女性と結ばれたり、人間を助けようとする描写があったり…余談ですが、最近公開された「キングコング、髑髏島の巨神」もそうです。

ですから、なぜゴジラが日本を侵略しようとしているのかわからないんですよね、ゴジラ側の気持ちが全く読み取れない。そこが少し引っかかります。まあ、ゴジラを自然災害とみたてるには仕方ないのかもしれませんが。